ハイドロポニックス pH・EC

ハイドロポニック(水耕栽培、養液栽培)・システムでの培養液の管理とメンテナンス

すべてのハイドロポニック・システムで、定期的な培養液のチェックとメンテナンスは欠かせません。

  1. 培養液のpH値チェックと調整 : pH値とは液体の酸度/アルカリ度の値です。最適な培養液のpH値は5.8〜6.3の間であり、6.2がもっとも最適な値です。
  2. EC、またはCFとは、培養液にどのくらいの量の肥料が溶けているか、という培養液の肥料濃度を示す値です。
    日本では「mS/cm」単位で表すEC(電気伝導率)メーター、または「ppm」などで表すTDS「総溶解固形分」メーターで計測するのが一般的です。厳密には、このふたつはちがうものですが、ハイドロポニック用の肥料を希釈した水の肥料濃度を知るためだけならば、どちらを選んでも大きな問題は起こりません。しかし、水質を測定するための防水仕様でなくてはなりません
    ECメーターもTDSメーターのいずれも、製品によって計測範囲の限度や、表示する単位がちがうため、ハイドロポニックスに適した計測範囲のもので、使いやすさで選ぶと無駄がありません。例えばECメーターなら、0〜20 mS/cm(=dS/cm)までの計測範囲のもので差し支えありません。

    最適な肥料濃度は、プラントの種類ごとに変わります。また、暑い夏の日には、プラントの葉からは水分だけが蒸発してしまうため、時間の経過とともに培養液 の肥料濃度が濃くなる傾向があります。その場合はEC値の調整のために水を加える、というように季節によっても培養液の管理方法が変わります。

pH値とは?

pHの値は、0〜14で表されます。0から7までが酸性、7から14までがアルカリ性です。pH値7は中性、酸性でもアルカリ性でもありません。

一般的なプラントが好む培養液のpH値は、5.2〜7.5の間で、これを外れると肥料成分のなかで吸収できないものが出てきて生長障害などを起こしやすくなります。プラントにもっとも最適なpH値は、5.8〜6.3の間です。日本の水道水はpH値 7 の中性で、世界の水道水の中でもハイドロポニック栽培に非常に恵まれた水質です(日本各地によって多少異なります) 。軟水に分類される日本の水道水では、重炭酸塩が多く含まれないため培養液のpH値を5.8からスタートさせます。

培養液のpH値管理方法は、数日ごとに定期的に計測して、pH値が6.3以上になったらpHダウナーで5.8までさげ、数日後に再び6.3以上に上がったら培養液をすべて新しいものに取りかえます(※基本的に、培養液のpH値は使用する肥料メーカーに従ってください)

EC値とは?

プラントに最適な培養液の肥料濃度EC値は、種類によって、または花が咲いて終わるのか果実が実って収穫するのか、によっても変わります。

培養液の肥料濃度を知るには、液体計測用のECメーターかTDSメーターを利用します。ECメーターは水の中にどのくらいの量の電解質があるか(肥料イオン量)を計測します。計測した値の数値が大きいほど、多くの肥料が溶けています。また、水温が高いほどほとんどの肥料成分はよく溶けるため、同じ量の肥料を溶かしても、水温によってもEC値が変化します。
一般的に、レタスなどの葉もの野菜は薄い肥料濃度を好み、トウガラシやトマト、バラなど花や果実が実るプラントは葉もの野菜よりも高い肥料濃度を必要とします。日本の水道水はEC値0.2mS/cm (100ppm)以下の軟水で、世界の水道水の中でも、かなりハイドロポニックスに恵まれた水質です。(日本各地によって多少異なります)

肥料成分ってなに?

ハイドロポニックスの原則は、必須肥料成分がすべて溶けている培養液と、水分や薬品に耐性が強い不活性な培地でプラントを栽培します。プラントが生長をつづけるために不可欠な必須要素のうち根から吸収できているのは、実際には全体の25%にしかすぎません。その他の75%は二酸化炭素(CO2)であり、空気中から吸収しなくてはならないのです。

【 大切なのは培養液のクオリティー 】

ハイドロポニック栽培で育つプラントは、あなたが与える培養液だけが唯一の養水分を得られる源となります。
そのため、培養液をつくる水質と肥料の成分は、非常に重要になります – (日本の水道水はハイドロポニックスに最適であり、日本のハイドロポニック・ガーデナーは水質に恵まれています。)

次に、ハイドロポニックの培養液で重要になるものが「肥料」です。豊富で品質の良い収穫を楽しむためには、必須要素すべてが最適な比率で配合されている肥料を選ぶ必要があります。
土壌や培養土での栽培では、実際にどのくらいの肥料が、どんな比率で効いてくれているのかを知ることは不可能です。しかしハイドロポニックスでは、すべての必須肥料を水で希釈した培養液で与えることができるため、正確な量の肥料を最適なバランスでプラントに与えることができるため、非常に生長がよくなります。また、ハイドロポニック専用の肥料には、人体に有害な重金属や軽金属をはじめ、プラントにとって不要なナトリウム等の余分なミネラルが含まれていないため、一般園芸用のリーズナブルな肥料に比べて肥料濃度を高めにして与えることができます(とはいえ、濃い肥料の与えすぎは禁物です)。

一般的な土壌用の肥料には必須成分すべてが配合されていないため、ハイドロポニックスでの使用には適していませんが、ハイドロポニック肥料には14種類の必須肥料成分すべてがバランスよく配合されているため、土耕栽培にも非常に適しています。

【 生長期用と開花期用に分かれたハイドロポニック肥料 】

一般的なハイドロポニック肥料は、「生長期パート」と「開花期パート」に分かれています。

  1. 生長期パート」は、プラントの幼苗期から生長期のあいだに適した比率の肥料成分となっていますが、開花期着果後の肥大期間には適していません。
  2. 開花期パート」は、プラントの開花時期と果実が実る時期に適した比率の肥料配合になっています。

また、ハイドロポニック用肥料には「硬水用肥料」と「軟水用肥料」が選べるようになっているものもあります。ハイドロガーデンの母国であるイギリスの水道水には、重炭酸塩が多く含まれているため「硬水」にカテゴライズされます。「硬水用」のハイドロポニックス肥料は、硬水中の重炭酸塩に含まれる成分を減らした配合になっています。一方、日本の水道水は上記で述べた通り、重炭酸塩の含有量が少ない「軟水」なので、井戸水などを使用しないかぎり肥料の種類で悩む必要はありません。

品質の確かなハイドロポニック用肥料には、プラントが必要とする必須肥料要素すべてが最適な比率で配合されています。さらに、ハイドロポニック・システムで使用できる肥料は、成分すべてが「水溶性」でなければ、即効性がないうえ必須肥料要素すべてを吸収することができなくなってしまいます。
一般的に肥料のボトルに表示される「NPK」とは肥料比率を表し、「N」=窒素、「P」=リン酸、「K」=カリウム、を指します。窒素、リン酸、カリウムは必須肥料要素の中でもプラントが必要とする量が多く「多量要素」とも呼ばれますが、この3種類だけ与えていれば育つわけではありません。

培地やシステムにあわせて進化するハイドロポニック肥料

今日、施設栽培と家庭菜園でハイドロポニックスがポピュラーになるにつれて、さまざまな栽培テクニックが研究され定着しています。

ほとんど培地を使わない水耕栽培をはじめ、ロックウールやクレイ・ペブルスなど不活性培地を多く使う固形栽培、ココ栽培やソイルレス・ポッティングミックス培土など有機質の培地を利用した有機培地栽培など、さまざまなハイドロポニカリーな方法が進化し、農業生産者やホビーガーデナーは、各国の水質、栽培コスト、プラントの種類にあわせて選択することができます。

それとともに、栽培テクニックに合わせた専用肥料が作られるようになりました。ハイドロポニック全般で使える肥料、ロックウール専用肥料、ココ培地専用肥料、ソイルレス・ポッティング培土専用肥料などです。それぞれの肥料は、培地の特徴にあわせて配合比率が考えられているため、初めてトライする栽培テクニックでも失敗が少なく豊富な収穫が楽しめる、というメリットがあります。

 上記文章および画像は、英国ハイドロガーデン社の協力のもと一部引用し、作成したものです。
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