ハイドロポニック培地の種類

ハイドロポニックス(水耕栽培、養液栽培)に適した培地。

土を使わないソイルレス・ガーデニングでの「培地」の役割は、プラントの根を張らせ水分と肥料を保つことだけであり、不活性で肥料成分をまったく含んでいないものだけが適しています。

培養液や空気に長期間触れつづけていても成分が変化しない不活性な培地には、いくつかの種類がありますが、共通していることは「分解しない」ことと「無菌状態」であるということです。プラントは、この不活性な培地内に保たれた培養液を吸収して生長します。
ここでは、不活性な培地の中でも、とりわけ空気と水分を理想的な割合で保つことができる品質のよい培地をご紹介します。

クレイ・ペブルス(ハイドロボール、ハイドロトン)

クレイ・ペブルスはハイドロボールともいい、粘度をまるく焼成したものです。レンガのようにかたいので、内部にできたすき間がつぶれず、長期間安定して空気を保つことができる上、培養液を変質させることがないので、培養液を再循環させるシステムにいちばん向いています。
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天然の粘度を回転炉で1100℃〜1200℃の高温で回転させながら焼成すると、発泡した球体が形成されます。
粘度を回転焼成すると多孔質となり、この内部にできた無数のちいさな孔が培養液とともに空気をたくさん保つことができる無菌状態のすぐれた培地になります。焼いた粘度は孔がたくさん空いた状態でレンガのように硬くなるので、長期間にわたって空気をたくさん保つことができます。根のまわりに常に空気が保たれていることは、プラントの健康にとって非常に重要なことです。

クレイ・ペブルスは、使用後にしっかり洗えば、再利用が可能です。使い方は、ポット栽培をはじめ、ココ培地と混ぜて使うほか、フラッド&ドレイン・システムにもっとも適した培地です。その他の培地と比べて、培養液の肥料成分になんの影響も与えないため培養液をくり返し循環させるシステムに最も適している培地です。とくに蘭の生産者に高く評価されています。クレイ・ペブルスには、小粒、中粒、大粒とサイズに種類がありますが、フラッド&ドレイン・システムやドリップ・イリゲーションなどのハイドロポニック・システムには、大粒サイズが最適です。

一方で発芽には向かないため、ロックウールやスポンジなど保水力のある発芽培地で芽をだして、ある程度まで生長したら、クレイ・ペブルスをセットしたポットやシステムで栽培をスタートさせます。培養液を循環させるハイドロポニック・システムでは、クレイペブルス培地を多めにすることがポイントのため、収穫まで使用するプランターやポットの大きさの5%〜15%ほどの大きさのロックウールで発芽や発根をさせてから、根が伸びたらクレイペブルス培地をセットしたネットポットなどに、ロックウールごと苗をセットします。

 

クレイ・ペブルスは、メーカーによって原料産地などがことなるため確かな品質のものだけが ハイドロポニックスに向いています!!!
CANNA アクアクレイペブルスは、ハイドロポニックスに最適です。

ココ培地

ヤシガラ、ココ・コイヤー、ココ・ピートなど、呼び方は様々ですが、すべてココナッツの外皮を細かく粉砕させたものです。クレイペブルスやロックウールとは違い、分解されにくい天然繊維でできているため、不活性ではありません。ココ培地には保肥性があり培養液を変質させるので、ココ培地での栽培方は培養液に浸したままにしたり、培養液を再循環させることは、できません。Run-to-Waste、またはRunOff、とよばれる培養液のかけ流しだけが最適な水やり方法です。

養液栽培に使用できるココ培地とは、一般園芸用ココ培地のような塩分やアクを洗浄しただけではなく、キャナココ培地のように最適な期間だけ堆肥化させ、雑草、砂、病原菌の混入リスクがなく、バッファリング処理をくり返したココ培地だけです。


ホビーガーデニングで人気が高かったピートモスが、環境負荷を理由に採掘を制限され、新たな有機ソイルレス培地へのニーズと、ロックウールのような使いやすい有機質の培地へのニーズが高まりました。やがてハイドロポニックスの市場でココ培地が紹介されると、ココ培地は世界中で急速にポピュラーな存在となりました。

ハイドロポニックスに適したココ培地とは、根が張りやすく空気がたくさん保てる適度な細かさになっているもの、そして、塩分とアクの洗浄はもちろん、保肥性とアンバランスな成分を調整するためのブァッファリング処理が施してあるもので、一般園芸や農業資材用のココ培地よりも、処理方法にコストと手間が多くかかります。
ココナツの外皮であるココ培地には、もともとカリウムが多く含まれているため、ココ培地にはココ専用の肥料を使用し、PK肥料を長期間使いすぎない注意が必要です。

また、ココ培地は決して土ではありません。ココポニックスともよばれるココ栽培は、ほぼハイドロポニック栽培になるため、決して乾かしすぎないでください。与えた培養液が50%以下になるまで乾かしてしまうと、根にストレスがかかり生長が遅くなります。

保水性と含気性が高く清潔なココ培地は、発芽や発根のプロパゲーション用培地としても優れています。発芽や発根させたあと、ココ培地やポッティング・ミックス培土、土壌などの有機培地へ定植する場合は、ココ培地でプロパゲーションをおこなうとカンタンです。

ロックウール培地

ハイドロポニックスで安心してつかえるものは、農業用ロックウールのみです。培養液をわずかに変化させるので、培養液を再循環させるよりもRun-to-Wasteが最適です。

ロックウールは玄武岩を高温で液状に溶かしてから回転させ、綿菓子のようにフワフワとした繊維状にしたものです。ハイドロポニック用培地では、もっとも長くポピュラーでありつづけた培地であり、ホビーガーデナーと施設栽培者の両方に広く愛用されてきました。

保水性とともに、空気もたくさん保つことができ排水性も高く、無菌で清潔です。2cm〜5cm角ほどの小さなロックウールは、発芽や挿し木に適したプロパゲーション用培地として最適ですが、クレイ・ペブルス、ココ培地、ポッティング・ミックス培土へ定植する場合は、ロックウールだけが先に乾いてしまうので根がしっかりと伸びるまではロックウールだけが乾かないように注意が必要です。

農業用につくられた最高級グレードのロックウールは玄武岩だけを原料に作られており、一般的なグレードのロックウールの原料は、玄武岩、岩石、その他コークスなどを組み合わせて作られています。
非常に安い園芸用ロックウールや建築資材用ロックウールは、溶融スラグを原料としており、鋼や鉄などの不要ミネラルが含まれていることが多いため培養液を劣化させることがあり、ハイドロポニックには適していません。栽培専用以外のロックウールのなかには、栽培に使用すると培養液中に不純物が溶け出し、肥料バランスをくずしてしまうのもあります。このようなロックウールは、水で濡らすと泡立つことがよくあります。

どのような品質のロックウールを使用するとしても、すべてのロックウールは使用前に「プレ・ソーキング」が必要です。ロックウールは、その原料からpH値が弱アルカリ性なので、使用する前には弱酸性の水に浸し、pH値の調整をすませておきます。弱酸性の水に浸す時間は、品質により一日〜3日と幅があります。

ロックウールは、繊維の細かさなどから培養液中の特定の肥料成分だけを溜めてしまう性質があります。そのため同じ培養液をくりかえし循環させるシステムでロックウールを使用する時は多少注意が必要です。大きなロックウール・マットをつかって培養液を再循環させるシステムで育てる場合は、定期的にマット内部からスポイトで培養液のサンプルを採取し、pH値とEC値を計ります。ロックウール・マットから排水された培養液と、ロックウール内部ではpH値とEC値が同じではありません。

ロックウール内部のEC値が高い時は、通常の2倍に希釈した培養液でロックウールを洗い流します。プラントの根元に肥料成分が白く結晶化してしまう時は、培養液の濃度が濃すぎてプラントが吸収しきれていないサインです。このような時も2倍に希釈した培養液で洗い流し、その後培養液のEC値を低めにして管理します。

上記文章および画像は、英国ハイドロガーデン社の協力のもと一部引用し、作成したものです。
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