ハイドロポニック・システムの種類

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さまざまなハイドロポニック(水耕栽培、養液栽培)・システム。

ハイドロポニック・システムは一般的に大きく分けて2種類のタイプに分けることができます。

  1. パッシブ・システム :  プラントへの水やりは、一般的に手動でおこないます。

  2. アクティブ・システム : プラントへの水やりは、水中ポンプなどをつかって自動制御でおこないます。

1. パッシブ・システム — 手動での水やり

【 ポット栽培 】
植木鉢をつかったポット栽培は
、ハイドロポニック栽培のなかで、もっともシンプルでコストが安い方法であるため、初心者に最適な栽培方法です。植物の種類に最適なサイズのポットにソイルレス・ミックス培土を入れます。

ポットの受け皿または、底面給水トレイに培養液を手動で給水して、ボトム・フィーディング(底面給水)をおこないます。
底面に溜められた培養液は、毛管作用で培土全体に行き渡ります。一般的には、培土が乾いてから必要な量だけ培養液を与えますが、受け皿にためた培養液が30分以内にすべて吸収されてしまう量だけをボトム・フィーディングします。いつでも受け皿に培養液がたまっている状態は、根ぐされや肥料の過不足による生育障害などが発生しやすくなります。

2. アクティブ・システム  — 水中ポンプで水やりを自動制御

その 1 : 【  フラッド&ドレイン  or  エブ&フロウ 】

一般的にフラッド&ドレイン(エブ&フロウ)では、専用の栽培トレイいっぱいにクレイ・ペブルス培地を敷きつめるか、栽培トレイ内にポットをセットして、そこにプラントを定植し栽培します。

TITAN タイタン フラッド&ドレイン・システム

flood&drain


クレイ・ペブルスが乾くタイミングをみはからって栽培トレイに培養液をくみあげ、クレイ・ペブルス全体にいきわたった時点で栽培トレイからすべての培養液を排水させます。一日にほんの数回だけ、フラッド・サイクルをおこなうのがポイントで、水中ポンプのスイッチON/OFFは、24時間タイマーで制御します。

栽培トレイから培養液がすべて排水されると、酸素がたっぷりの新鮮な空気がプラントの根に行き渡ります。フラッド&ドレインは、ハイドロポニックスのなかでも構造がシンプルで生長促進効果と収穫率が非常に高く、栽培管理がカンタンにできるシステムです。

このシステムは、日が当たっている時間帯に数回だけ培養液をフラッドさせる必要があります。そして、これが他のハイドロポニック・システムでの栽培管理時よりも気をつけなくてはならないポイントでもあります。万が一、水中ポンプが止まってしまうと、培養液のフラッドがおこなわれずプラントは水切れを起こして枯れてしまいます。しかしポンプの作動と流入口と排水口の目づまりの有無さえしっかりとチェックしていれば、栽培管理も自動化できランニングコストも低くおさえられるうえ、他のどのシステムよりも栽培効率の優れたハイドロポニック・システムです。

フラッド&ドレイン・システムは、発芽用システムにはまったく向いていませんが、クローン用システムとしては非常に優れています。
リザーバータンクに、発根促進剤や根の活力剤を希釈した培養液をいれ、培地が乾く前にフラッドをします。発根するまでは、こまめに葉面スプレーをおこないます。
また、流入口と排水口を備えた栽培トレイとリザーバータンクという構造からなるこのシステムは、あらゆるハイドロポニック・システムのなかでもっとも汎用性がたかく、培養液の排水をコントロールすれば、ココ培地やポッティング・ミックス培土などでのポット栽培も可能になります。

その 2  : 【  エアロポニックス

エアロポニックス・システムは、光が入らない密閉できる容器内で空間に根を伸ばします。


根が伸びた空間に“ミスト状”にした培養液をスプレーして、プラントに吸収させます。空間中にある根は豊富に酸素を吸収できるため、生長が非常に早くなることが、このシステムの特徴です。

培養液が根にきちんとスプレーしつづけるために、ポンプの動作やノズルの目づまりなどの定期的なチェックが欠かせません。エアロポニック・システムは、吐水量が大きい水中ポンプや加圧ポンプが必要になります。フラッド&ドレインや循環式システムと比較すると、水中ポンプを動かしている時間が圧倒的に長いため、モーターの使用劣化が比較的早くなり、ランニングコストは多少高めになりますが、水道水中のミネラル塩が原因となるスプレーノズルや、給水チューブの目づまりは、軟水の日本では少ないためメンテナンス面で恵まれているといえます。

また、酸素量が豊富なエアロポニック・システムでは、根が早く長く伸びます。リーフレタスでさえ根が100cm以上にまで伸びてしまうことがあるので、根を伸ばす容器は深いものでなくてはなりません。

一方でエアロポニック・システムは、非常に優れたクローン用システムとなります。豊富な酸素と高い湿度に恵まれた挿し木は、嫌気性の腐敗菌が発生しづらく、根となる細胞のもとが新たに作られやすい最適な環境になります。

総括してエアロポニック・システムは、クローン用システムとしての評価が高く、収穫目的の栽培では、数ヶ月で収穫できる葉もの野菜や短期収穫が可能なプラントに限った方がメンテナンスがカンタンで実用的です。

 

その 3  : 【  ドリップ・イリゲーション

ドリップ・イリゲーション・システムは、通常、ポットまたはロックウールのポットかスラブにプラントを植えて、循環ポンプでリザーバータンク内の培養液をくみあげドリッパーから培地表面に培養液をドリップします。


GEMINI ジェミニ 循環式システム

 

培地の底から流れでた培養液の排水は、リザーバータンクにもどしてくり返し循環させるか、排水を捨ててしまう「Run-to-Waste」=かけ流し、のどちらかでシステムを動かします。

一般的にはクレイ・ペブルスは「PLANT !T GEMIN〜ジェミニ〜」のような培養液を再循環させるシステムに適した培地であり、ロックウールやココ培地は、Run-to-Waste が最適です。

再循環式のドリップ・イリゲーションシステムは、肥料コストを抑えることができ、ドリップするたびに廃液を捨てる必要がないので、リザーバータンクと排液タンクを別々に設ける必要がありません。しかしリザーバータンク内の培養液が減ったままにすると循環ポンプが空回りして故障するので、培養液の量をこまめに確認する必要があります。

再循環式システムでの培養液のドリップは、クレイ・ペブルスが乾いてからおこなうため、1時間〜4時間ごとに一度、ほんの数分間だけがベストです。ドリップのタイミングや回数は、室温と根の量など、培地の乾くスピードに合わせます。

Run-to-Wasteは常に新鮮な培養液を与えられることと、ひとつのプラントに根ぐされ病などが発生しても、他のプラントに感染しにくいメリットがあります。Run-to-Waste〜かけ流し〜用のシステムは、TITANフラッド&ドレイン テーブルキットなどの、栽培トレイとリザーバータンクが分かれたハイドロポニック・システムをリザーバータンクと排液タンクを分けるなどしてカスタマイズするとカンタンにおこなうことができます。Run-to-Wasteで使った培養液は捨ててしまわずに、ハンギングやガーデンの草花に与えましょう!

そして今日、ポピュラーなドリップ・イリゲーションのシステムは、複数のポットにココ培地かクレイ・ペブルスを入れ、リザーバータンクにつながったドリップ・チューブをそれぞれのポットまでひっぱり、チューブの先端にドリッパーをセットして、培地表面から培養液をドリップするトップ・フィーディング方式です。
ポットごとにドリップをおこなうポット・ドリップ・イリゲーションのメリットは、Run-to-Waste にすれば、ロックウール、ココ培地、ポッティング・ミックス培土など培地の種類を選ばないこと、栽培エリアの増減がカンタンにおこなえること、病害虫トラブルのプラントだけを取りのぞくことができること、などが挙げられます。
ポット・ドリップイリゲーションのデメリットは、培養液を給水するチューブの目づまりチェックなど、水中ポンプを含めドリップ・ラインのメンテナンスを定期的におこなわないと、水漏れをおこしたりプラントが枯れてしまうこと、そして収穫後の清掃メンテナンスが多くなることなどです。しかし、栽培面積がそれほど広くない場合は、他のシステムと同じ程度のメンテナンス管理で大丈夫です。

ポット・ドリップイリゲーションに用いるシステムも、TITANフラッド&ドレイン テーブルキットなどのフラッド&ドレイン・システムをカスタマイズすると手軽におこなうことができます。

その4  : 【  DWCシステム

DWCシステムは、非常にシンプルな構造のハイドロポニック・システムでエアレーション・システム、バブラー・システムなどとも呼ばれています。栽培管理方法がとてもシンプルですが、一度にたくさんのプラントを育てることには向いていないため、「少しだけでいいからカンタンに育てたい」、と考えるホビーガーデナーやビギナーに人気があります。
AEROS エアロス DWCシステム


 

ふたのついたバケツ、大きなネットポットとクレイ・ペブルス、吐出量が大きめなエアーポンプ、エアーチューブ、そしてエアーストーン、これがDWCシステムをつくるパーツのすべてです。バケツに溜めた培養液にエアーポンプとエアーストーンで空気を送ると培養液のしぶきがネットポット底面のクレイ・ペブルスを湿らせ、プラントの根はバケツの底面に向かって伸びはじめます。

プラントの根は培養液に浸った状態で育つため、培養液にはつねに空気を送り続けなくてはなりません。エアーポンプの吐出量が限られているので、ひとつのDWCシステムにつき5L〜20L程度のバケツや容器が大きさが限界です。培養液量が少ないので、pH値とEC値が変わりやすく、継ぎ足しもコマメにおこなう必要があります。そのため、このタイプのシステムで多数のプラントを育ててしまうと、一日の大半を栽培メンテナンスで費やすことになってしまいます。

 

その5  : 【  NFTシステム

NFT システムは、Nutreitnt Film Technique の略で、平らなNFTチャネル(=NFTガリー)の底部に、薄いフィルム状になるように培養液を流しつづけてプラントの根に肥料と水分を与えます。

培養液が流れる厚みが ほんの1mm〜3mmになるようにNFTチャネルの傾斜角度と流量を調節します。システム本体は、完全に水平な場所で設置しなくてはなりません。NFTチャネルから排水された培養液は、再びリザーバータンクにもどりNFTチャネルへとくみ上げられます。NFTシステムは、培養液を再循環させるハイドロポニック・システムです。

nutrient_film_technique

 

一 般的なNFTシステムは、チャネル、またはガリーと呼ばれる細長く底面が平らなパーツにプラントを植え、リザーバータンク内の水中ポンプで培養液をくみあ げてチャネルに流しつづけます。プラントの根元は、スポンジ、ロックウールやクレイ・ペブルスなどとネットポット内で支えます。

プラントの根は、培養液の流れにそって、NFTチャネルの底面で平らなマット状に発達します。ごく薄い培養液の表面でプラントの根は、肥料、水分、そして空 気を豊富に吸収できるため、根の発達と生長が早く、多収穫になります。また、システム設置が複雑ではなく、栽培管理がカンタンでランニングコストが安く多収穫になるため、既製のNFTシステムならばビギナーにも向いています。

一方で、培養液の流れが深すぎたり速すぎたりすると、根に酸素と肥料の欠乏が起こり、根ぐされや収量減につながりますが、基本的なマニュアルに沿って栽培をおこなえば、栽培効率とランニングコストとにも非常に優れたハイドロポニック・ システムであるため、オーストラリアでは商業用施設栽培でさかんに取り入れられています。

培養液を流す水量は、約1リットル/毎分が一般的です。こうなるように培養液を流しつづけるためには、NFTチャネルに「1:40」の勾配(1mにつき25mm傾斜)をつけることが望ましいとされています。
培養液の水量が約2リットル/毎分を超えると、根が肥料を吸収できなくなります。また、チャネルを長くしすぎると排水口付近のプラントに肥料が欠乏します。

NFTシステムのポイントは、培養液をたいらに、ごく薄く流すことでプラントの根が酸素を豊富に吸収でき、早く生長し収穫量が豊富になることです。しかし、底の浅いチャネルでキュウリやトマトなど果実が実るプラントを育てると重みでチャネルが凹み、内部の空間がせまくなるので酸素欠乏が起こります。栽培したいプラントの種類によって、慎重にNFTチャネルのサイズを選び、あらかじめ支柱の準備や誘引方法を決めておく必要があります。

一方で、塩ビパイプなどの円筒形のパーツでつくるNFTシステムを DFTシステム(Deep Flow Technique)といいます。

底が丸いパイプでは、プラントの根がルートボール状に発達するため、根の内部で酸素欠乏が起こりやすくなります。それを防ぐためには、24時間タイマーなどで2つのポンプを時間差で作動させ一定間隔で培養液の厚みが1mmになるように流量を変化させるか、一定間隔で水中ポンプのスイッチをOFFにし培養液の流れを止めるなどして、根への酸素供給量をふやす工夫をします。

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上記文章および画像は、英国ハイドロガーデン社の協力のもと一部引用、作成したものです。
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